「サービスプロフィットチェーン(Service Profit Chain, SPCと略されることもある)」とは、従業員満足(Employee satisfaction, ESと略する)、顧客満足(Customer satisfaction, CSと略する)企業利益の因果関係を示したフレームワークのことである。サービス・マーケティングの先駆者であるハーバード・ビジネススクールのへスケット教授(J.S.Heskett)と、サッサー教授(W.E.Sasser,Jr.)らが1994年に提唱した概念です。

サービス業では生産と消費が同時に行われるという特徴があります、よって、顧客接点の最前線にいる従業員の満足度向上が大変重要となります。サービスプロフィットチェーンでは、ESがサービス水準を高め、それがCSを高めることにつながり、最終的に企業利益を高めるとしており、その高めた利益で従業員満足度を更に向上させることで、より良い循環の構図が出来上がります。

サービス業には、顧客向けのエクスターナル・マーケティング(External Marketing、EMと略する)、従業員に対するインターナル・マーケティング(Internal Marketing、IMと略する)、従業員と顧客とが接する際のインタラクティブ・マーケティング(Interactive Marketing)の3種のマーケティングタイプがあるとされますが、SPCではIMが重要視されています。

SPCのベースとなる因果関係として次の7つが挙げられます:(1)企業の内部サービス品質がESの原動力となる、(2)高いESが、高い従業員ロイヤルティを生む、(3)高い従業員ロイヤルティが、従業員生産性向上の原動力となる、(4)高い従業員生産性が、サービスの品質向上につながる、(5)高いサービス品質が、CSの原動力となる、(6)高いCSが、顧客ロイヤルティの原動力となる、(7)高い顧客ロイヤルティが、企業の収益性と成長性の原動力につながる。ESとCSの間には99%の因果関係があると考えられているため、全てのCSが顧客ロイヤルティに繋がるとは限らなくとも、ES向上のためのIMが重要とされています。

従業員第一主義をかかげ、顧客は2番目であると主張しているローゼンブルース・インターナショナル社の事例では、CEOのハル・ローゼンブルース氏は顧客の心をつかむための通路である従業員こそ大切にすべきだと言っています。従業員を第一にするために幹部は現場従業員と多くの時間を費やし、彼らが業務を遂行しやすいよう技術の導入等のサポート体制を整え、従業員の賃金を上げつつも総人件費の割合を下げる方法を考えるなど、ES向上のために幹部は多くの時間をIMに費やしました。結果、企業業績が向上した同社は、SPCが成立している良い例です。

以上のように、SPCではESとCSの両方を向上させるWinWin状態を作ることで企業利益を拡大させることが重要です。長期的に収益力の高い企業経営を目指すのであれば、ESは必要不可欠です。ESは報酬アップで得られると考えられがちだが、恒常的に従業員のモチベーションを高め、企業への帰属意識を高めるには仕事の面白さ、遣り甲斐等も重要となるでしょう。