「アウトプレースメント(Outplacement)」とは、人員削減をする企業の依頼を受けて、解雇する従業員の再就職を支援するビジネスのことをいいます。

人員削減の頻度が高いアメリカで1980年代から取り入れられるようになったこのビジネスは、日本においては1990年代のバブル崩壊によって余儀なくされた人員削減を発端に、広く利用されるようになりました。

人材派遣や紹介といった他の人材ビジネスとの違いは、求職者を「採用する」企業が採用に至るまでの諸費用を人材派遣会社に支払うのに対し、アウトプレースメントでは「人員削減をする」企業がその費用を負担することです。雇用調整のためにアウトプレースメントにまで費用を掛けられるということで、比較的資本の大きい大企業で長年勤めた中高年の求職者が多いのも特徴です。

リストラを行う際の企業・従業員間の摩擦を減らして円満解決を目的としているため、人員整理を行う企業の大多数が外部に委託しています。委託を受けるアウトプレースメント専門の企業は、労使間の紛争を解決に導くためのアドバイスを行い、求職者に対しては求人の斡旋だけではなく、カウンセリングや適職診断、キャリアプランの作成指導、履歴書の書き方や面接技術のトレーニング、パソコン講習、電話やコンピューター等の設備の利用などのサービスを提供しています。

また、精神的に不安定になりがちな求職期間をサポートするためのメンタルケアも充実させ、短期間での再就職を目指して求職者を支援します。他企業への再就職だけでなく、独立して自営業をスタートするケース、派遣や出向、アルバイトやパートへの転向等、求職者の多種多様なニーズをサポートするプログラムがあります。ただし、アウトプレースメントビジネスはあくまでも再就職「支援」であり、人員削減の対象となった従業員の再就職先を保証するものではありません。

アウトプレースメントビジネスは景気に左右される事業で、企業が人員整理を行う不況期に需要が増えます。市場規模は年々拡大しており、導入されはじめた1997年の市場規模は38億円、翌1998年には73億円、1999年には146億円、2000年には160億円(出所:厚生労働省「平成12年度労働者派遣事業報告」、「平成12年度民営職業紹介事業報告」、(社)日本人材紹介事業協会「再就職支援事業市場調査」)そして2002年には320億円、2005年には400億円と、アウトプレースメント会社数は200社(出所:株式会社NTTデータ経営研究所)まで伸びを見せています。逆に、企業が雇用の維持に努めがちな好況期には需要が減るため、アウトプレースメント業界にとっての不景気と言われています。