人事を変える集合知コミュニティ HRアゴラ

人事の常識の逆転発想

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2017年08月04日

あえてジャングルのような見づらい陳列で商品探しを楽しませる雑貨量販店、布団敷きを利用客に任せることでプライベート感を高める旅館など、ヒット商品・サービスが世間の常識とは逆の発想で生まれることをしばしば見聞する。 これを人事制度にも応用してみてはどうだろうか‥‥。

ということで分野ごとにいくつか考えてみた。左が常識、右が逆転の発想である。

<採用>
●優秀な人材を採用する ⇒ 優秀でない人材を採用する

そのままではありえないが、少し発想を変えて、珍しい人材を探してみてはどうだろうか。たとえば、スマホを持ってない学生など。

●会社が採用するかどうかを決定する ⇒ 学生が入社するかどうかを決定する

最終面接まで学生の判断で進める会社が実在する。主体的で自立心のある人材確保のために、一定枠を設けて学生に採用権を預けているそうだ。学生が企業を選ぶというスタンスなので、自ら質問を用意する必要があり、学生にとっては大変とのことだ。

●最初に社員が面接をし、最終的に役員が決定する ⇒ 最初に役員が面接をし、最終的に社員が決定する

役員がよいと判断した人材も、実際に働くのは現場である。現場にフィットする人材を採るために有効かもしれない。役員の手間が大変だが。

<報酬>
●給与は会社が決定する  給与は社員が決定する

さすがに本人自らが決めるのは難しいだろうが、社員全員で決めるという会社はある。ある企業では、自らの成果を皆の前でプレゼンし、そこで給与を決める仕組みとなっている。

●賞与は現金で支給する  賞与を宝くじで支給する

全額は無理にしても、1万円分くらいを宝くじで支給というのはイベント感があって面白いかもしれない。「最初から現金でほしい」というせりふは野暮である。そういえばサイコロで手当を支給している「面白法人」が実在するのは、人事関係者ならご存じの方も多いのでは。

<人事評価>

●何を評価するかは会社が決める ⇒ 何を評価してほしいか被評価者が決める

全項目はともかく一部の評価項目について、被評価者が自ら選択できる制度は現実性があるだろう。実際に導入している自治体もある。長所に着目し、それをもっと伸ばすという考え方は、今後、重要になるはずだ。

●上司が部下を評価する ⇒ 部下が上司を評価する

ご存じのとおり360度評価という形で取り組む企業があるが、目指すのは部下のみの評価である。上司の能力向上と、部下の評価に対する理解促進のために、3年に1回くらいやってみてはどうだろうか。

●評価は部下の納得性を重視する  評価は上司自身の納得性を重視する

部下に納得してもらわなくてもよいので、とにかく自分が納得できる評価をする‥‥。一見、上司はラクなようだが、実は課せられた責任は重い。上司は部下の生殺与奪の権を握ることになるからだ。より真剣な評価を求めるには、こちらの方がよいかもしれない。

<目標管理>

●部下が自分の目標を決める  上司が部下の目標を決める。さらに、部下が上司の目標を決める

営業部門の売上目標など、実質的に上司が部下の目標を決めることは多く見られる。これを1歩進めて、部下が上司の目標を決める。もちろん、全目標を決めるのではなく、一部について、複数の部下が話し合って、上司に何らかリクエストをするのである。リクエストは業務そのものに限らず、マネジメントの仕方などでもよい。組織活性化のためにも結構有効と思える。

●目標は個人で設定する  目標はチームで設定する

個人単位での目標管理をやめて、チームあるいは部署単位の目標管理にするということだ。もちろん、達成手段として各メンバーに役割を与えるが、個々の仕事に関する目標管理はしない。チームへの参加意識の向上や、個々の目標管理の時間の効率化など、メリットは意外に大きいと思う。

以上、思いつくままに挙げてみた。人事制度というのは、どうしても固定観念に引きずられて当たり障りのないものになりがちで、ともすると、現在あるいは今後の経営環境にマッチしていなかったり、社員のニーズを反映できていなかったりするケースが多い。

今回のような逆転発想は、制度の本質をあらためて考える機会になるとともに、有効なアイデアの源泉にもなりそうである。何よりも自由な発想というのは、やっていて面白い。夏休みを迎える方も多いと思うので、遊び半分でやってみてはいかがだろうか。

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