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技能実習の安易な受入は禁物

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2016年12月02日

先月28日、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(外国人技能実習法)」が成立・公布された。労働力不足への対応として、既存の外国人技能実習制度の見直しを図るものである。

外国人技能実習制度は、諸外国の青壮年労働者を一定期間産業界に受け入れて、産業上の技能等を修得してもらうという制度である。
創設されたのは1993年で、20年以上にわたって日本の国際貢献の一翼を担ってきたわけだが、一方で、実習期間中は労働基準法上の労働者とみなされなかったため、さまざまなトラブルが生じた。
一時期、最低賃金法の下限をはるかに下回る賃金での労働や、過酷な労働環境で実習生の失踪が相次いだことなどが問題となったことを記憶している方も多いと思う。

このため、2010年に制度が改正され、座学以外の実習期間中は労働関係諸法の適用を受けることになり、少なくとも時給300円といった劣悪な労働条件での雇用はなくなった。
ただ、以前のような低コスト労働者として受入は少なくなったとはいえ、最低賃金を支払えば労働力を確保できるということで、人手不足の地域・業種などでは結構なニーズがある(なお、外国人技能実習法の成立で、賃金は日本人が従事する場合の賃金と同等以上のものが求められるようになった)。

技能実習は、企業自らが受け入れを行う「企業単独型」と、商工会や中小企業団体等の営利を目的としない団体の斡旋を通じて受け入れを行う「団体監理型」の2種類があり、ほとんどは後者の方式で実施されている。

団体も慈善事業ではなく、実習生1人あたり数万円という手数料が得られるので、企業等に”売り込み”をかけている。中には、「最低賃金でよく働く労働者を供給します」といったブローカーまがいの営業を展開する団体もあるようだ。

しかしながら、この受入を安易に行うのは禁物だ。もちろん、制度の趣旨を理解したうえで、それに則って実施するのであれば何ら問題はない。ただ、単なる労働力確保のための受入ならば、慎重な対応が必要である。

確かに出稼ぎ感覚でやってくる者がいるのも事実で、その場合は、双方のニーズはマッチするのだが、技能向上を目的とする労働者も多くいる。労働政策研究・研修機構が行った「帰国技能実習生フォローアップ調査(平成26年度)」によれば、来日目的として、69.2%の実習生が「技能の修得のため」を挙げている。

そういった実習生は、技能修得のことなど考えていない会社の意向をすぐに察知するに違いなく、処遇に不満が生じるのは目に見えている。
2・3ヶ月の短期間なら我慢するかもしれないが、実習は3年間(外国人技能実習法では最長5年間)という長期にわたるものであり、何らかのトラブルが発生しないほうがおかしい。

受入企業の中には、「実習生は応募にあたって受入機関に保証金を払っているので、少々待遇が悪くても簡単にやめたりはしない」と考えているところもあるようだが、保証金は現制度では禁止されている。そもそも、そういった強制労働を肯定するような発想自体が論外である。
そのような労働力を受け入れて、職場の雰囲気がよくなるはずもなく、トータルで見て会社のメリットになるかは、はなはだ疑問である。

制度目的と違うという「理想論」だけでなく、次のような実際的なデメリットもある。

① 賃金を最低賃金とした場合には、他のパート等との賃金の差からトラブルのおそれがあること(※上述したように、法施行後はパート等と同等の賃金が必要となる)。また、パート並みを支給すれば、監理団体への手数料も加えるとメリットが薄れること
② 「実習」という趣旨から、単純労働ばかりさせるわけにはいかないこと、また、むやみな長時間労働もできないこと
③ 技能実習計画の作成と、これに基づく指導が求められること
④ 宿泊施設を確保しなければならず、このとき労基法の寄宿舎の規定が適用されること
⑤ 事前に日本語の研修を受けるとはいえ、どれだけ意思疎通できるかは不明なこと
⑥ 実習期間終了までの有期労働契約となるため、途中の解雇は困難なこと

以上から、種々のトラブルの発生や、現場社員への負担の増加が懸念されるのは明らかだ。

労働力確保の面があってもよいが、それ以上に、技能修得・国際貢献という意識が強くなければ、結局のところ、金銭的・時間的・精神的コストが多大にかかった挙句、会社・従業員にも実習生にもメリットのないLose-Loseの関係に終わってしまうリスクが高い。

受入れを考える企業は、これらのことを検討したうえで、慎重な判断をすべきだろう。

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