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地方自治体や地方企業必見! 全国から応募者が集まる「求人票」のつくり方〜鹿児島県長島町が実践した、採用に成功する6つの取り組み〜

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2016年03月23日

鹿児島県の北端の島々からなる長島町では、地域力の強化を図るために、「地域おこし協力隊」を募集しています。この「地域おこし協力隊」は、地域外から人材を募集することで、今までなかった視点を取り込み、地域を盛り上げることを期待されています。移住を伴う働き手の募集にもかかわらず、長島町には、首都圏をはじめ、さまざまな地域から人材が集まり、採用に至っています。そこで今回は、長島町を例に、求職者をひきつける求人票のつくり方とアピール方法をご紹介します。

全国から応募者が集まる「求人票」のつくり方

人材募集において、地方企業や中小企業が特に悩んでいるのが、候補者が集まらず、母集団を形成できないことです。大企業や有名企業のように採用認知度が高い会社ならば、母集団を形成しやすいですが、地方企業や中小企業は望む人材になかなか出会えないことが多いようです。

そんななか、鹿児島県の北端の島々からなる長島町の「地域おこし協力隊」募集には、さまざまな地域から現在約30名の応募があり、採用に至っています。2016年2月現在も応募者は増えています。自身も「地域おこし協力隊」として東京から長島町に移住した土井隆氏に、長島町の取り組み事例から、求職者をひきつける募集活動についてお話をうかがいました。

求職者に会社や仕事を知ってもらうための6つの取り組み

 

1 採用ページ作成ツールを活用して魅力的な採用ページを作成して最大限アピールする

ターゲットとなる候補者に興味をもってもらうためには、自社の魅力を最大限アピールしなければなりません。自社のホームページに採用情報を掲載している企業は多いですが、簡単な採用要件だけを掲載している企業を多く見かけます。最近は、ITに関する専門知識がなくても、ブログを作る感覚で魅力的な採用ページを簡単に作成できる無料ツールがありますので、活用してみましょう。

長島町では、これまで町役場のホームページの新着情報欄に簡単な採用要件だけを掲載していましたが、新着情報を見る人は限られていますし、閲覧されたとしても簡単な情報しか掲載されていなかったため、求職者の関心をひきつけることはできていませんでした。長島町では、今回の「地域おこし協力隊」の採用活動をするにあたり、無料の採用プロモーションツール「スタンバイ・カンパニー」を利用しました。写真をふんだんに使い、情報量も増やし、見やすくデザインした魅力的な採用ページを作成、求職者に興味をもってもらえるようにしたのです(このツールを利用すると、無料の求人広告サービス「スタンバイ」にも自動的に掲載されます)。 また、長島町ホームページのトップページでは、わかりやすいところに「採用情報」のバナーを常設し、この採用ページへのリンクをはり、長島町に興味をもった人がホームページを訪れた際に、採用ページを訪れやすくしました。

<長島町の取り組み>
・無料の採用プロモーションツール「スタンバイ・カンパニー」を利用し、魅力的な採用ページを作成
・町のホームページのトップページに採用ページへの常設リンクを設置

 

2 明るく楽しげで、ワクワク感を覚えるような写真を必ず添える

採用ページには、働く環境の魅力が伝わる写真をふんだんに使いましょう。写真は、一瞬でたくさんの情報を伝えることができ、また閲覧者の印象にも残りやすいものです。写真を掲載できる場合は、必ず掲載しましょう。その際、使用する写真は明るく、伝えたい内容が一目ではっきりとわかるものにします。暗くぼけた写真や、内容が伝わりにくい写真では、どんなに仕事の内容が素晴らしくても、良い印象を与えられず、応募数は増えません。

長島町の採用ページを見てみると、まず、青い海と緑豊かな長島町の島々が目に飛び込んできます。その下には、長島町の特産品である「ブリ」を掲げた笑顔の漁協の組合員や、長島町の素材を使用した装飾品、「赤土バレイショ」を収穫する女の子の写真が並びます。これらの写真は、掲載するスペースがあったから、なんとなく掲載したというわけではありません。長島町の海や特産物、そしてそれらを扱う長島町の人々の姿を的確にアピールする手段として活用しているのです。

自然に囲まれた長島町の特産品を扱う人々の生き生きとした姿を写真で見せることで、「このような自然豊かなところで働いてみたい」「自分もはつらつと働きたい」と採用ページを訪れた求職者の想像をかきたて、興味をひきつけるものとしています。特に働く人の写真を重視し、この人と一緒に働きたいと求職者に思ってもらえるような生き生きとした表情のものを選んでいます。

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<長島町の取り組み>
・働く人の生き生きとした表情がわかる写真を掲載
・長島町の自然や特産品など、働く地域の様子がわかる写真を掲載

 

3 働いている姿を想像できるような求人タイトルをつける

求人タイトルは、募集する仕事の内容が一瞬で伝わるものにしましょう。かっこよく難しい言葉を使う必要はありません。求職者に伝わり、仕事をしている自分の姿を想像してもらえるような求人タイトルにするとよいでしょう。ありきたりな言葉を並べているだけでは他の会社との差別化を図れません。多少文字数が多くなったとしても、仕事の内容を想像できるくらい具体的な求人タイトルにすると、他の会社との違いを表せます。

長島町では、6つのカテゴリ、24の職種を応募していました。たとえば、「長島町の特産品を活用して加工品を作る」という長島町の素材をいかす仕事カテゴリの求人タイトルは、「長島町のデコポンやサツマイモ等を使って洋菓子を作れる方」「長島町の木、竹、花を活用し、木工細工、装飾品等を制作できる方」とし、具体的な特産品名を求人タイトルに入れました。長島町ではどんな特産品があるのかを知らせ、長島町で働くとしたら、それらを活用してどんなことをしてほしいのかを具体的に表しています。

nagashima22 <長島町の取り組み>
・特産品名を掲げた具体的な求人タイトルをつける

 

4 仕事内容は求職者がイメージしやすいよう、とにかく詳細に書く

仕事内容は制限文字数ギリギリまで書きましょう。ハローワークの「求人申込書の書き方」にも、「文字数が多いほど応募者が多いという調査結果もあります」と書かれています。面接の際に仕事内容を具体的に説明すればよいなどと考えていても、応募は集まりません。入社後に想定している仕事の内容や作業内容を可能な限り具体的に書きましょう。そうすることで、求人票を閲覧した求職者が働いている場面を想像し、こんな仕事ならばやってみたいと思わせられれば、応募へとつなげられるのです。

長島町の採用ページでは、町にはどのような特徴があり、どのような活躍をしてほしいのかを説明しています。単に「観光業を盛り上げてくれる人材を募集します」とだけ書いても、長島町がどのような場所かわからず、また「観光業」の範囲が広すぎます。また、求職者が活躍できるかどうか判断できず、応募しにくくなります。

詳しい仕事内容を掲載するために、まずは現在いる主要メンバーで話をしてみることをおすすめします。話をすることで合意形成もできますし、現在の課題が見えてきます。課題が見えれば、今後どんな仕事をしてほしいのかが具体的に見え、求職者にも説明がしやすくなります。ときには新たな仕事ができたりもします。今回、長島町の人たちは話し合いをしたことで「スポーツ人脈があり、スポーツ合宿を誘致できる方」「化石に詳しく、分かりやすく説明することができ、観光や教育に生かせる方」という人材の募集が決まりました。これらの仕事は、今までの長島町には存在しませんでした。長島町の自然をいかす仕事を話し合うなかで、生まれた新たな仕事です。

詳しい内容を書くことは、面接時にも役立ちます。求職者は、求人票を見て、仕事内容を想像します。その想像が具体的なほうが、面接でもより具体的で詳細な会話ができ、採用のミスマッチを防げるのです。

<長島町の取り組み>
・既存メンバーで話し合い、具体的な仕事内容を求人票に掲載する

 

5 代表者からのメッセージとして職場の雰囲気や目指す未来などを伝える

転職に際して、求職者は会社の方針や雰囲気も気になるものです。「会社の方針に合うか」「会社になじむことができるのか」なども、応募への重要な判断基準になります。掲載スペースがある場合は、会社の顔である代表者のコメントやミッション・ビジョンを掲載しましょう。

長島町では、求人票の最初に長島町の副町長である井上貴至氏のコメントを載せています。井上氏は総務省の官僚ですが、「地方創生人材支援制度」を創設し、自らこの制度を利用して長島町の副町長の職に就いており、地方の地域が活性化することを熱心に考えている人物です。その井上氏の直接の言葉を掲載することにより、長島町の方針や、町おこしへの熱量、「地域おこし協力隊」に求めていること、そして何より一人で活動しているのではなく、長島町の人々と一緒に活動していることを伝えることができたのです。

<長島町の取り組み>
・長島町副町長である井上貴至氏のコメントを掲載し、長島町の方針や雰囲気、「地域おこし協力隊」に求めていることを伝える
6.魅力的な求人票をつくり上げたら、SNSで積極的に発信し、周りの人に「シェア」してもらう

生き生きとした人たちの写真を複数枚載せ、具体的な仕事内容や代表者からのメッセージ、職場の雰囲気を記載した魅力的な求人票をつくり上げたら、たくさんの人に見てもらえるように、SNS(FacebookやTwitter、LinkedInなど)を利用して広く発信しましょう。SNSで発信すると、その情報を閲覧した人が、自分の知り合いに広め、広範囲の人に情報が届くようになります。

長島町の人たちが今回つくった採用ページには、閲覧した人が簡単に1クリックでSNS(FacebookとTwitter)にシェアできる機能がついていたため、町役場の人たちや長島町を応援してくれている人たちに、採用ページを紹介してもらうよう依頼し、積極的に情報を拡散しました。その結果、Facebookで700以上の「シェア」がありました。Facebookを使うと、発信力のある人に「シェア」してもらうことで、情報を広めてもらえます。これにより、今まで情報が届かなかった人にも届くようになりました。これまでは血縁関係のある方からの応募が多かったのですが、長島町にゆかりのない方の応募が増えました。

<長島町の取り組み>
・長島町を応援してくれている人たちに採用ページを「シェア」してもらうよう依頼

まとめ
長島町の今回の採用活動で良かったのは、長島町ではこういう課題があるけれども、長島町の資源を活用して、ワクワクすることを一緒にやっていきませんかというメッセージを明確に打ち出せたところです。決して有名ではない鹿児島県の長島町ですが、これら6つの取り組みにより、他地域からの人材採用が決定しています。これまで他地域の人材を採用できるとは考えていなかった企業や自治体も、自分たちのアピール方法を見つめなおし、一緒に働ける素晴らしい仲間を増やしてください。

今回インタビューした方:土井隆さん
慶應義塾大学卒業後、楽天株式会社など複数の企業に在籍。2012年にWebサービスをプロデュースする株式会社コアースを設立。2015年10月に鹿児島県長島町の地域おこし協力隊第1号として着任。doi

文:冨田 有香

 

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