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ダメ面接官は明確な評価ポイントがない人を不合格にする|ダメ面接官の10の習慣

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2015年12月17日

面接の質を高めるために人事担当者が取り組むべきこととは? 新連載「ダメ面接官の10の習慣」では、ダメな面接官に共通する特徴を取り上げながら、面接の質を向上させ、採用力を高めるためのノウハウをお伝えしていきます。第1回でご紹介する習慣は「ダメ面接官は明確な評価ポイントがない人を不合格にする」です。

面接とは、成果の見えにくい仕事である

面接という仕事の特徴の一つに、「成果の曖昧さ」があります。面接は基本的に、候補者を合格とする(採用または次の選考へ進ませる)か、不合格(不採用)とするかの二択。しかし、そのジャッジが本当に適切だったのかは時間がたってもわかりにくいものです。大器晩成という言葉もあるように、採用した人材が入社後1~2年は期待した成果を出せなかったとしても、それだけで採用ミスとはいえないでしょう。

一方、不合格とした候補者に関してはさらにわかりません。もし、能力ある候補者を不合格としたとしても、それによる自社の成長機会の損失を確認することはほぼないからです。

面接官の心理は「落とすほうがラク」

そう考えると、面接官は「落とす(不合格とする)ほうがラク」です。たとえば、ある候補者を次の選考に進ませると、次の面接官に対する説明責任が生じます。候補者のどの部分を評価したのかを、面接で得た事実に自身の見解を加えて説明しなければなりません。

しかし、人間とはそもそも曖昧な存在ですから、100%の確信を持って合格させることは滅多にないでしょう。多少迷いつつ、「どちらかといえば良さそうだから合格させよう」と判断することも珍しくありません。面接で合格の判を押すには、少なからず「賭け」の要素が含まれているといえます。

一方、不合格にしてしまえば話は簡単です。不合格とした理由を深く追求されることはあまりありません。また、2次選考以降で不合格とする場合は、前の選考で候補者を合格とした面接官と意見のすり合わせを行うこともありますが、前の選考を担当した面接官は自分よりも職位が低いケースが多いため、負荷はそれほど大きくないでしょう。こうしたことから、面接は「落とすほうがラク」なのです。

採用力の高さは、どれだけ「原石」を拾えるかで決まる

このような心理的背景から、面接官は「合格させたくない」という思考に陥りがちになります。過去の実績や属性といった明確な評価ポイントから「良い人材です」と胸を張って言える候補者でなければ、不合格としたほうが無難と判断してしまうのです。しかし、明確な評価ポイントを持つ候補者の評価は誰にでもできるため、そんな候補者“だけ”を合格させていては、競争の激しいレッドオーシャンで採用活動しているようなものです。採用競合が強ければなかなか採用できず、結果的に採用力が落ちてしまうのです。

合格させる明確な評価ポイントがない候補者でも、その候補者の持つ行動・思考パターンなどから将来自社にもたらされるであろう成果を想像することは可能です。そこに賭けることができれば、他社と奪い合うことなく、良い人材を採用できるかもしれません。これをポテンシャル(潜在能力)採用と呼びます。このように、まだ磨かれていない「原石」をどれだけ見つけることができるかで、採用力の高さが決まるのです。

面接官には「合格させる勇気」を持ち続けてもらう

「原石」を見つけるには、面接官に「合格させる勇気」を持ってもらうことが必要です。面接の基本は、候補者の過去のエピソードを聞きながら、パーソナリティーや能力を判断できる具体的な根拠(事実)を多く集めることです。そうした明確な評価ポイントにより、合格のジャッジを下すべきですが、「時間的制約などにより明確な評価ポイントは見つからなかったけれど、良さそうな気がする」という場合も、勇気を持って合格とするべきです。

そして、次の選考を担当する面接官は、前の選考を合格した根拠が曖昧な候補者と面接し、不合格の判断をしたとしても、「なぜこんな候補者を合格させたんだ!」と前の選考の面接官を叱責してはいけません。不合格にした理由のフィードバックは必要ですが、それと叱責は別です。叱責してしまうと、その面接官には「落とすほうがラク」という心理が働き、「明確な評価ポイントがない限りは合格させないようにしよう」と考えるようになってしまいます。高い採用力を維持するために大切なのは、面接官に「合格させる勇気」を持ち続けてもらうことなのです。

ウチは落としすぎている? 簡単なチェック方法

「落としすぎている」という状況に陥っていないか、簡単にチェックする方法があります。それは面接1回あたりの通過率を見ることです。「面接の通過率は、会社や職種によって異なるだろう」と感じる方もいるでしょう。確かにその通りですが、ここでは簡単にチェックするため、平均値といわれる30%を基準に判断します。

たとえば、新卒採用における大手企業の合格率(合格者÷受験者)は1%程度です。大手企業の新卒採用では、面接は4回程度実施するのが平均的ですので、計算すると、面接1回あたりの通過率は約30%になります(通過率30%を4回行うと合格率が1%程度になる)。中途採用の場合は、面接2回で合格率10%というのが平均的ですので、面接1回あたりの通過率は新卒採用と同じく約30%になります。この30%という数字は、多くの企業が試行錯誤してたどり着いた結果なのです。

面接1回あたりの通過率は30%以上を保ちましょう

自社の面接1回あたりの通過率が30%以下の場合は要注意です。面接は比較的精度の悪い選考手法ですから、私は10%台の通過率では「落としすぎている可能性がある」と考えます。面接1回あたりの通過率は、面接にかけるマンパワーの許す限り高くしたほうが、「原石」を採用しやすくなります。ぜひ一度チェックしてみてください。

 

ダイレクト・リクルーティングの採用成功事例

著者プロフィール: 曽和 利光 氏

sowa01

リクルート、ライフネット生命、オープンハウスと、業界も成長フェーズも異なる3社の人事を経験。現在は人事業務のコンサルティング、アウトソーシングを請け負う株式会社人材研究所の代表を務める。

編集:高梨茂(HRレビュー編集部)

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