人事を変える集合知コミュニティ HRアゴラ

人事制度構築にあたっての重要5ポイント

2

2014年04月08日

人事制度は社員の処遇の仕方を規定するもので、業績に大きな影響を与えるため、企業の諸制度の中でも特に重要な項目の1つといえる。
制度構築にはさまざまな作業があり、それぞれ留意事項もたくさんあるが、ここでは構築にあたってこれだけは留意しておきたいという5つのポイントを指摘しておこう。

1.目的をしっかりと持つこと
まずは何のために人事制度をつくるのか、目的を明確にすることである。漠然と、現行制度が古くなったからとか、年功序列から成果主義に転換する必要があるからとかではなく、経営ビジョンや経営戦略とのつながりを明示することが求められる。たとえば、「新ビジョンを実現するための人材を育成する」とか、「グローバル戦略の担い手として競争力を強化する」といった具合である。
制度構築は、その目的を達成するための手段であることを強く意識し、使命感をもって取り組みたい。つくる側からすると、目的がはっきりしなければ、単なる事務作業に陥って士気が上がらなくなってしまうこともある。

2.コンセプトを明確にすること
目的に沿って、制度を設計する際のコンセプトを固め、明示することも大切となる。コンセプトとは、「成果重視」「プロセスを評価」「オープンな制度」など、人事制度の基本方針のことである。
目的-コンセプトの流れが整合しているとブレない制度作りができる。具体的な作業に入っていくと、さまざまな選択肢が出てきて迷うことがあるが、コンセプトがしっかりしていれば正しい判断ができる。また、運用が始まり、制度の修正が必要となったときにも、コンセプトに即して意思決定を行うことができる。

3.力の入れどころを認識すること
制度構築には多くのステップを積み重ねていく必要があり、完成までの道のりは長い。その全てに全力を注ぎ、細密な検討を繰り返していては、制度作りが遅々として進まなくなる。
大切なのは要所を押さえることだ。それ以外の細かなところは、決まらなければ後回しでもよいし、仮決定しておいて後で変えるのもありだ。
では要所とは何か。最も注力したいのは評価制度であり、特に評価項目と評価基準の設定である。そのベースとなる等級基準の役割や成果要件も要となる。これらは人事制度の核となるものなので、念入りに検討していく必要がある。
人事制度というと報酬制度が中心であり、それに多くの時間を費やす企業があるが、報酬を決定付けるのは評価であるから、評価制度に社員の納得が得られれば、報酬制度に対する不満はそれほど起きない。逆に、どんなに精緻な報酬制度を組み立てても、評価制度がズサンであれば、社員の納得性や理解は得るのは難しくなる。

4.完璧な制度を求めないこと
人事制度に関しては、どんなに時間をかけても、誰もが満足する制度はつくれない。もちろん社員の意見を聞かなくてもよいということではないが、あらゆる社員の要望を取り入れることは不可能だ。
また、さまざまな事態を想定して、細かなルールをあれこれと考えていてもきりがない。まずは枠組みを固めてスタートし、走りながら改善していくというスタンスが大事である。
ある上場企業で、制度設計を始めて導入までに7年かかったと苦労話を聞かされたことがあったが、いくら何でもかけすぎだ。制度づくりを口実に仕事をサボっていたのではないかと内心思ってしまった。
人事制度は構築ではなく、運用でベストを目指すべきだ。制度づくりと運用との比重は4:6、場合によっては3:7くらいになると考えてよい。

5.情報を公開すること
人事といえば密室作業のイメージがあるが、制度構築に関してはこの考えは払拭したい。開始から終了まで、今どんな作業をどのように進めているのか、内容はどういうものかを大まかでよいので社員に逐一アナウンスしていくことが非常に重要である。できれば、節目に経営トップ自らによる説明がほしい。
人事制度は社員の生活に直接かかわってくる事項だけに、その導入は疑心暗鬼になりやすく、抵抗も生じやすい。できるかぎりの情報公開することで社員の受け入れ感情がずいぶん違ってくる。内密に進めて、導入直前にドカンと公開するようなやり方では、スムースな運用はまずムリであることを肝に銘じておきたい。

この記事はあなたの人事キャリア・業務において役に立ちましたか?

参考になった場合はクリックをお願いします。