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メンタルヘルス欠勤に対する規定の整備

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2015年08月07日

就業規則の休職に関する定めは、「私傷病による欠勤が○ヶ月連続した場合」となっているものが多く、メンタルヘルス不調などによる断続欠勤への対応が難しいことを前回述べた。今回は、どのような規定を設ければよいかを整理してみたい。

まずは、休職基準として、上記に加えて次のような規定を設けることが考えられる。

「1年間において通算○日以上、継続または断続的に欠勤した場合」
「欠勤日数が月間○日以上に及ぶ月が数カ月断続し、通常の勤務に耐えられないと会社が認めた場合」

ただ、これらは日数が明確なだけに、基準に達しないよう無理をして出社しようとする社員が出てくる可能性がある。そこで、

「第〇号の欠勤に準ずるような断続的な欠勤を繰り返すなど、正常な勤務が期待できない場合」
「前各号に準ずる程度の断続的な欠勤状態にあると会社が認めた場合」

といった規定を設けることで、そのような社員にも対応は可能となる。

中小企業などでは、日数を明確に定めるよりは、もっと抽象的な表現をした方が柔軟に対応できて適切なケースもある。そのような場合は、

「心身の状況により、勤務が不適当と認められる場合」
「精神又は身体上の疾患により労務提供が不完全な場合」
「精神の疾患により職務に耐えられない場合」

といった規定も考えられる。基準としてあいまいになるため、恣意的な運用となり、トラブル発生のリスクは高まるが、何も規定しないよりはよいだろう。

もう1つ、規定で考えておきたいのは、復職後の「休職期間の通算」についてだ。

よくあるのは、 「復職後3ヶ月以内に同一ないし類似の疾病による欠勤が連続6勤務日以上に及んだ場合は、休職期間は中断されず、出勤期間を除いて前後を通算する」というものである。

これだと、復職後3ヶ月間は連続欠勤を5日以内に抑え、休職期間をリセットさせようとする社員が出てくる。これを防ぐためには、次のような規定への変更が必要となる。

「・・・欠勤が連続6勤務日以上に及んだ場合、または断続的な欠勤が〇日以上となった場合は、・・・」

また、メンタルヘルス不調は回復まで時間がかかるので、「復職後3ヶ月間」を「復職後6ヶ月間」などとすることも検討材料といえる。

ところで、このような規定に変更すると、不利益変更に該当するのではないかという懸念がある。

結論をいえば、確かに不利益変更には違いないが、上記レベルの規定変更であればメンタルヘルス不調者への対応として許容されると考えられる。

判例を見ても、「休職期間の通算」を復職後3ヶ月間から6ヶ月間に延長し、さらに、同一ないし類似の事由による欠勤の場合は、何年経過しても欠勤日数が通算されるという内容を追加した規定変更の有効性が争われた事件で、

・・・労働者にとって不利益な変更であることは否定できない。そこで、その必要性及び合理性について検討するに、近時いわゆるメンタルヘルス等により欠勤する者が急増し、これらは通常の怪我や疾病と異なり、一旦症状が回復しても再発することが多いことは被告の主張するとおりであり、現実にもこれらにより傷病欠勤を繰り返す者が出ていることも認められるから、このような事態に対応する規定を設ける必要があったことは否定できない。(中略)過半数組合である野村総合研究所従業員組合の意見を聴取し、異議がないという意見を得ていることも認められる(「野村総合研究所事件」東京地2008.12.19)

としている。組合・労働者への意見聴取や賛意も要件としているものの、メンタルヘルス不調に対応するための変更は、合理的な内容であれば認められると考えてよいだろう。

メンタル不調者への対応は、非常にデリケートなものが求められ、現場はもちろん人事部門にも大きな負荷がかかる。その負荷を少しでも減らせるよう、このような規定整備をしておくことの必要性は高い。

 

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