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メンタルヘルス欠勤を繰り返す社員への対応

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2015年07月03日

うつ病などのメンタルヘルス不調により欠勤を繰り返す社員が増えている。

メンタルヘルス欠勤の特徴は、3日来ては2日休むというように欠勤が断続的になること、出欠勤が当日にならないと不明なこと、そういった勤務状態が長期にわたることだ。
さらに、出勤したとしても判断力や行動力など万全とは言い難く、業務遂行能力のレベルは著しく低下している。

仕事というのは他の社員との協業により成り立つものなので、そのような社員が職場にいることへの影響は小さくない。中途半端に出社してもらうよりも、体調が整うまで、きちんと休んでほしいというのが本当のところだろう。

今回は、会社として当該社員に休職してもらうことができるかを考えてみたい。

通常、企業では就業規則に休職の規定を設けており、休職命令の要件として、
①私傷病による欠勤が○ヶ月連続したとき
となっているものが多い。○の部分は「3」が一般的ではないだろうか。これに加えて、
②その他会社が必要と認めるとき
といった趣旨の要件もよく見られる。

メンタルヘルス不調の場合は、連続して欠勤するわけではないので、単純に①を当てはめると休職させるのは難しい。では、②の適用はできるだろうか?

結論を言えば。次の3点から適用は可能と考えられる。

1.労働契約の視点

労働契約とは、「労働者が使用者の指揮命令に従って労務を提供すること、使用者がその報酬として賃金を支払うこと」である。
断続的な欠勤の状況にもよるが、冒頭の例が半年も続くようであれば、債務の本旨に従った労務の提供がなされているとはいえないだろう。
したがって、労務の提供が期待できる状態まで、社員に休業を命じることには合理性があると考えられる。

2.業務運営の視点

繰り返すが、会社というのは労働者が役割分担をしながら所定の成果をあげていく活動なので、出社の有無がその日にならないとわからない状況では、仕事配分や進行に問題が生じるのは明らかである。
職場の円滑な業務運営に支障をきたさないよう休業を命じるのは、これも合理性があると考えられる。

3.安全配慮義務の視点

以上の2つだけでも休職命令は可能と考えられるが、もう1つ確認をしておきたいのが社員の健康への配慮である。
使用者には、安全配慮義務があり、たとえ社員が自らの意思で働いているとしても、健康不安を抱えていることが明らかな中で労働をさせ、病状が悪化したり、労災を発生させたりすれば、責任を問われることもありうる。

これに関しては次の判例もある。

(使用者は…中略)労働者の生命、健康が損なわれることのないよう安全を確保するための措置を講ずべき雇用契約に付随する義務(安全配慮義務)を負っており、したがって、労働者が現に健康を害し、そのため当該業務にそのまま従事するときには、健康を保持する上で問題があり、もしくは健康を悪化させるおそれがあると認められるときは、速やかに労働者を当該業務から離脱させて休養させるか、他の業務に配転させるなどの措置を執る契約上の義務を負うものというべきであり、それは、労働者からの申し出の有無に関係なく、使用者に課せられる性質のものと解する(「石川島興業事件」神戸地姫路支1995.7.31) 。

安全配慮のために、具体的に確認しておきたいのは医師の診断で、たとえば3ヶ月の休養・加療を要す等の診断書があれば、休職命令を出す際の重要な根拠となるはずである。

これら3点から、「その他会社が必要と認めるとき」という②の条項の適用は十分に可能と考えられる。

もし、②のような規定はなく①だけの場合であっても、休職規定の趣旨からして休職命令を出すことの合理性は高いと思われる。
ただ、休職の必要性の程度は、②の規定がある場合よりも、さらに高いレベルが求められると考えられ、また、就業規則に明確な根拠のない命令は出しにくいのも事実である。

そのような事態にならないためにも、休職に関して就業規則の定めを整備しておくことがまずは肝要である。

そして、この際、メンタルヘルス不調による断続欠勤に、より適した規定を検討するのが大切だろう。どのような規定が考えられるか、次の機会に検討してみたい。

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